知的財産法資料室
判例:第1例
代理人の独り言*****
「敗訴判決は覚悟の上だったが・・・」
本件は、敗訴判決の後、上告し最高裁判所の判断を仰ぎました。
その詳細は、下段にアップしました。
判例全文
【事件名】「杵屋うどんすき」商標事件(2) 【年月日】平成9年11月27日 東京高裁 平成9年(行ケ)第62号 審決取消請求事件 原告 株式会社美々卯 同代表者 代表取締役薩摩和男 同訴訟代理人弁理士 西郷義美 被告 株式会社グルメ杵屋
同代表者代表取締役 椋本彦之 同訴訟代理人弁理士 石田長七 同 西川恵清 同 森厚夫 主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 原告 「特許庁が平成五年審判第五二五一号事件について平成九年二月一一日にした審決を取 り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。 二 被告 主文同旨の判決。 第二 請求の原因 一 特許庁における手続の経緯 被告は、「杵屋うどんすき」の文字を横書きしてなり、平成三年政令第二九九号による改正 前の商標法施行令別表第三二類「うどんめん、うどんめんを主材にした加工食料品」を指定商 品とする登録第二三五〇四五六号商標(昭和六三年三月一日商標登録出願、平成三年五月 二四日登録査定、同年一一月二九日設定登録。以下、「本件商標」という。)の商標権者であ る。 原告は、平成五年三月一六日被告を被審判請求人として本件商標の登録無効の審判を請 求し、平成五年審判第五二五一号事件として審判された結果、平成九年二月一四日、「本件 審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は同年三月一〇日原告に送達 された。 二 審決の理由の要点 (1)本件商標の構成、指定商品、登録出願日、設定登録日等は、前項のとおりである。 (2)請求人(原告)が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第五五三六二一号商標(以 下、「引用商標1」という。)は別紙(イ)に示す構成よりなり、第四五類「他類に属しない食料品 及び加味品」を指定商品として、昭和三三年九月五日登録出題、昭和三五年七月二九日設 定登録、その後二回にわたり商標権存続期問の更新登録がなされているものである。 同じく、登録第五一八五五九号商標(以下、「引用商標2」という。)は、別紙(ロ)に示す構成よ りなり、第四七類「うどん、干しうどん、うどん玉及うどんの加味加工品」指定商品として、昭和 三二年八月一〇日登録出願、昭和三三年四月一五日設定登録、その後二回にわたり商標権 存続期間の更新登録がなされているものである。 同じく、登録第二一六七九三五号商標(以下、「引用商標3」という。)は、別紙(ハ)に示す構 成よりなり、第三二類「うどん麺、うどんを主材にした加工食料品」を指定商品として、昭和六 二年三月一三日登録出願、平成元年九月二九日設定登録されたものである。 (3)よって按ずるに、本件商標は「杵屋うどんすき」の文字よりなるところ、構成中の「うどんす き」の文字は、「うどんを魚介類、鶏肉、野菜、その他の具と合わせて食べる鍋料理の一種」と して慣用されている事実を、被請求人(被告)提出の乙号各証及び職権による調査により認め 得るところである。 これに対し、請求人は「『うどんすき』は、薩摩平太郎氏が、昭和三年から四年頃にかけて、 安部豊武氏や食満南北氏等の食通に試食を求め、じっくりと工夫を重ね完成させた料理であ り、この料理に薩摩平太郎氏自身が命名したとされている。このように『うどんすき』なる語は、 薩摩平太郎氏が創作した料理の名称として考案された造語である。したがって、『うどんすき』 なる語は、造語であり、被請求人が認識するような、うどんを主材料とする料理方法の一つ、 を表す普通名称でないことは明らかである。」旨主張している。 そして、請求人の上記主張は正しいものであり、かつ、請求人が引用商標1ないし3を所有し ている事実も認め得るところである。 しかしながら、現在においては、「うどんすき」の文字は、「うどんを魚介類、鶏肉、野菜、その 他の具と合わせて食べる鍋料理の一種」として一般に認識され、普通に使用されている事実 を、被請求人(被告)提出の乙号各証及び職権による調査により認めざるを得ない。 そうとすれば、本件商標を構成する文字中の「うどんすき」の文字は、その指定商品との関 係においては自他商品の識別機能を有しないものというべきである。 してみれば、本件商標は、その構成文字に対応して、「キネヤウドンスキ」及び「キネヤ」の称 呼のみを生ずるものと認められるものであるから、本件商標より「ウドンスキ」の称呼をも生ず るとし、それを前提として、引用商標1ないし3と称呼上類似すると主張する請求人の主張は認 めることができない。 また、本件商標からは「杵屋のうどんすき」の観念が生ずるものと認められるのに対して、引 用商標1ないし3からは「美々卯のうどんすき」の観念を生ずるものであるから、両者は観念上 も区別し得るものである。 さらに、両商標の構成は前記したとおりであるから、外観上は明らかに区別し得るものであ る。 してみれば、本件商標と引用商標1ないし3とは、その称呼、観念及び外観において区別し得 る非類似の商標と判断されるものである。 したがって、本件商標は商標法四条一項一一号に違反して登録されたものではないから、同 法四六条一項により、その登録を無効とすることはできない。 三 審決の取消事由 引用商標1ないし3の構成、指定商品、登録出願日、設定登録日等は、審決の理由の要点(2) 認定のとおりであることは認めるが、審決は、「うどんすき」の語が普通名称であり、慣用商標
であると誤認した結果、本件商標と引用商標1ないし3とは非類似の商標であると誤って判
断したものであるから、違法であって、取り消されるべきである。 (1)商標の構成中の文字が商品の普通名称であるかは、特定の業界内の意識の問題であ り、ある商標が極めて有名となって、それが一般人の意識ではその商品の普通名称だと意識 され、通常の小売段階での商品購入にその商品の一般名称として使われていても、それだけ ではその商標は普通名称化したとはいえない。そして、その判断は、その商標登録当時の国 内における当該商品の取引の実情にのみ従って決すべきである。 原告は、長年にわたり「うどんすき」の名称を使用して営業を続け、宣伝活動を行う一方、「う どんすき」の名称を使用する者に対しては、原告の所有する「うどんすき」の商標の権利侵害と して使用の中止を要請し必要な処置をする等商標の管理を徹底する努力をしてきた。その結 果、「うどんすき」は、取引界である飲食業界において、原告の業務に係る「うどんめん、うどん めんを主材料にした加工食料品」についての周知の商標であるとの認識が定着するに至って いるから、自他商品の識別力を有するものであり、普通名称化したものでも、慣用商標化した ものでもない。このことは、特許庁が第三二類「うどんすき」を指定商品とする商標登録出願の 審理において、甲第一四及び一五号証記載のとおり、「うどんすき」は普通名称であるとはいえ ないと判断していること、さらに、甲第一六、一七号証の各一、二記載のとおり、第三一類を指 定商品とする「うどんすき」の称呼を生じる商標について登録を認めていることからも明らかで ある。 したがって、本件商標中の「うどんすき」の文字は、自他商品の識別標識として機能するもの であり、本件商標「杵屋うどんすき」からは「キネヤウドンスキ」及び「キネヤ」の称呼を生じると ともに、「ウドンスキ」の称呼をも生じ得るから、本件商標は、引用商標1ないし3と同じ称呼を生 じる類似商標である。 (2)被告が飲食業界において、「うどんすき」の語が使用されていることを示す証拠として提出 した乙第一八ないし一二六号証は、飲食店のメニュー、のれん、看板、チラシ等に提供する料 理名として「うどんすき」が使われていることを示すものであり、このことは、これらの書証が役 務の提供、すなわちサービスマークとして「うどうすき」が使用されていることを示すものであっ て、「うどんめんを主材にした加工食料品」について「うどんすき」が普通に使われていることを 意味するものではない。また、飲食店を紹介する雑誌での使用を示す証拠として提出された乙 第一二七ないし一三四考証は、各料理店において提供する料理名として、すなわちサービス マークとして「うどんすき」が使用されていることを示すにすぎない。さらに、食器業界での「うど んすき」の使用を示す証拠として提出された乙第一三五、一三六号証も「うどんすき」が「うどん めんを主材にした料理用の食器」に使用されている事実を示すものであって、「うどんめんを主 材にした加工食料品」に普通に使用されている事実を示すものではない。 (3)仮に、「うどんすき」の語がサービスの分野において使用された結果、普通名称化しあるい は慣用商標化したとしてもその使用は、引用商標1ないし3の登録当時役務商標の制度がなか った法の不備のため原告において商標管理を徹底できなかったことによる悪意の使用であっ て、悪意をもって使用された結果慣用となっても慣用商標とも普通名称とも認められないこと は判例(大審院昭和二年一〇月二〇日判決)の示すとおりである。 (4)以上の理由により本件商標の「構成中の『うどんすき』の文字は、『うどんを魚介類、鶏肉、 野菜、その他の具と合わせて食べる鍋料理の一種』として一般に認識され、普通に使用されて いる事実を、被請求人(被告)提出の乙号各証及び職権による調査により認めざるを得ない。」 とした審決の認定判断は誤りであり、この誤った前提に基づいて本件商標中の「うどんすき」の 文字の自他商品の識別機能を否定し、本件商標と引用商標1ないし3とは、外観、称呼、観念 において非類似の商標であるとした審決は違法として取り消されるべきである。 第三 請求の原因に対する被告の答弁及び主張 一 請求の原因1及び2の事実は認める。審決の認定判断は正当であって、審決に原告主張 の違法はない。 二 原告は、普通名称の判断には取引上においてどの程度ひろく商品の名称として使われて いるか、どのように取引されているか、取引の実情を勘案すべきであると主張し、商標管理の 状況を縷々説明している。 しかしながら、審決は、原告の商標の使用及び商標管理の状況を看過しているのではなく、 取引の実情、すなわち商品「うどんすき」を取り扱う業界における取引者、需要者の通常の注 意力を勘案して、本件商標の「構成中の『うどんすき』の文字は、『うどんを魚介類、鶏肉、野 菜、その他の具と合わせて食べる鍋料理の一種』として一般に認識され、普通に使用されてい る」と認定判断したものであって、その認定判断に何らの誤りも存しない。 普通名称とはその商品の一般的な名称であると意識されるに至ったものをいうのであり、慣 用商標とは同種類の商品に関して同業者間に普通に使用されるに至った結果、自他商品の 識別力を失ったものをいうのであり、商標が普通名称化しているという事実あるいは慣用され ているという事実に対する取引者、需要者の意識は、当然時代とともに変化するものであっ て、三〇年以上も前の審決例である甲第一四、一五号証が現在においてそのまま採用できる ものではない。しかも、その後の審決例は、乙第二ないし八、一〇、一一号証記載のとおり、 「うどんすき」の語を「うどんを主役に色とりどりの季節の具を配したうどん料理」を指称し、かつ 一般にもよく知られていると認め得る旨認定している。また、普通名称あるいは慣用商標を、 それぞれの名称に相当する商品又は慣用商標が使用されている商品以外のものに使用した 場合には、商品の識別標識として機能することが当然あり得るものであるから、指定商品を異 にする甲第一六、一七号証の審査例をもって、直ちに「うどんすき」の語が普通名称あるいは 慣用商標でなく、自他商品識別力を有するとはいえない。 第四 証拠関係〈略〉 理由 第一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、同二(審決の理由の要点)の各事実並び に引用商標1ないし3の構成、指定商品、登録出願日、設定登録日等は、審決の理由の要点 (2)認定のとおりであることは、当事者間に争いがない。 第二 原告は、審決は、「うどんすき」の語が普通名称であり、慣用商標であると誤認した結 果、本件商標と引用商標1ないし3とは非類似の商標であると誤って判断したものである旨主 張するので、この点について判断する。 一 原告は、本件審判手続において「『うどんすき』は、薩摩平太郎氏が、昭和三年から四年 頃にかけて、安部豊武氏や食満南北氏等の食通に試食を求め、じっくりと工夫を重ね完成さ せた料理であり、この料理に薩摩平太郎氏自身が命名したとされている。このように『うどんす き』なる語は、薩摩平太郎氏が創作した料理の名称として考案された造語である」と主張し、審 決も「原告の請求人の上記主張は正しいものであり、かつ、原告が引用商標1ないし3を所有し ている事実も認め得るところである」と認定判断していることは、前記審決の理由の要点(3) のとおりである。 したがって、「うどんすき」なる語は、訴外薩摩平太郎が創作した料理の名称として考案した 当時は、普通名称でなかったことは疑う余地がない。 しかしながら、特定の商品に付された造語であっても、その語が長年使用されることにより取 引者、需要者に商品の一般的名称として認識されるに至る場合があり、その場合には、その 語は、普通名称化したと認めざるを得ない。そこで、本件商標の登録査定時である平成三年 五月二四日(このことは当事者間に争いがない。)を判断基準時として、「うどんすき」なる語が 普通名称化していたかについて検討する。 原本存在及び成立に争いのない乙第一二号証(工藤毅志他一名編「実用特選シリーズ 毎 日のおかず特選」株式会社学習研究社昭和六〇年三月二五日発行)及び乙第一三号証(石原 明太郎編「たのしいクッキング ご飯ものとめん料理」株式会社国際情報社昭和五〇年発行) によれば、これら一般家庭向けの料理書籍には、「冬のおもてなしになる鍋 うどんすき」ある いは「和風・ウドン ウドンすき」の項に、うどんを魚介類(大正えび等)、鶏肉、野菜(白菜等)、そ の他の具と合わせてだし汁を入れた鍋に煮立てて食する料理が記載されていること、原本存 在及び成立に争いのない乙第一四考証(「カネテツデリカフーズかわら版」株式会社カネテツデ リカフーズ平成元年七月二〇日発行)によれば、食品販売会杜の小売店向け情報紙には、「う どんすき」が「おでん、湯豆腐、すき焼、寄せ鍋」等とともに同社の販売する鍋物の一つとして 紹介されていること、原本存在及び成立に争いのない乙第一六号証の5(「麺類百科事典」株 式会社食品出版社昭和五九年六月一八日発行)によれば、麺類に関する専門的辞典には、 「うどんすき」の項に「うどんを主役に色とりどりの季節の具を配したうどん料理」と記載されて いること、原本存在及び成立に争いのない乙第一二七号証(「KOBE・OSAKA・KYOTOグルメ マニュアル89」株式会社京阪神エルマガジン社昭和六三年発行)及び乙第一二八号証(「ぴあ まんぷく図鑑91」ぴあ株式会社平成二年発行)によれば、京阪神地区の料理店とその特徴的 な料理品を紹介する一般需要者向けの書籍には、各店舗名とその特徴的料理品として「うど んすき」の記載があり、特に前者には、「うどんすき」の項に「うどんすきといえば元祖美々卯だ が、ここではあまり固苦しく考えず、うどん入りの鍋料理ということでうどんすきをとらえたい」、 「美々卯本店(大阪・本町)」の項に、「広く全国に名を知られた、押しも押されぬうどんすきの横 綱『うどんすき』という名称自体がこの店の登録商標であり、いつしか名前だけ一人歩きした− というエピソードは、大阪人なら周知の事実だ。」と記載されていること、がそれぞれ認められ る。 上記認定事実によれば、「うどんすき」なる語は、訴外薩摩平太郎が創作した料理の名称と して考案した当時は原告の商品としての出所表示機能を有するものであったが次第に京阪神 地区を中心としてうどんを主材料とした鍋料理を意味する語として使用されるようになり本件商 標の登録査定時である平成三年五月二四日当時には、既に本件商標の指定商品である「うど んめん、うどんめんを主材にした加工食料品」の一般需要者はもとよりその専門的な加工販売 業者等の取引者の間でも「うどんを主材料とし魚介類、鶏肉、野菜類等の各種の具を合わせ て食べる鍋料理」を意味するものと広く認識されるに至っていたものと認められる。 二 原告は、「うどんすき」なる語が自他商品の識別力を有するものであり、普通名称化したも のでも、慣用商標化したものでもないことは、特許庁が第三二類「うどんすき」を指定商品とす る商標登録出願の審理において、甲第一四及び一五号証記載のとおり、「うどんすき」は普通 名称であるとはいえないと判断していること、さらに、甲第一六、一七号証の各1,2記載のとお り、第三一類を指定商品とする「うどんすき」の称呼を生じる商標について登録を認めているこ とからも明らかである旨主張する。 しかしながら、〈証拠略〉によれば、特許庁は、指定商品を第三二類「うどんすき」とし、「瀬里 奈のうどんすき」の文字を横書きしてなる商標の登録出願についての昭和四二年一〇月一八 日付登録異議決定及び拒絶査定不服の審判請求に対する昭和四五年一月一〇日付審決に おいて、「うどんすき」なる語が普通名称化しているとはいえない旨判断していることが認めら れるが、いずれも前記判断基準時の二〇年以上前になされたものであり(〈証拠略〉によれ ば、平成元年一二月ないし平成三年二月の間に特許庁のした商標登録出願に対する拒絶理 由通知中には、「うどんすき」の語には自他商品の識別機能がない、あるいは商品の原材料、 品質を表示するにすぎないものとの判断が示された例のあることが認められる。)、また、〈証 拠略〉によれば、指定商品を第三一類「調味料(中略)食用油脂、乳製品」とし、「うどんすき」の 仮名文字からなる商標の登録出願について平成一年三月二七日に設定登録がなされ、指定 商品を第三一類「調味料、その他本類に属する商品」とし、「うどんすき」の変体仮名文字から なる商標の登録出願について平成八年一月三一日設定登録がなされていることが認められる が、いずれも本件商標の指定商品とは類を異にするのみならず、前記各証拠に照らし、これ をもって前記認定事実を左右することはできない。 また、原告は、仮に、「うどんすき」の語がサービスの分野において使用された結果、普通名 称化しあるいは慣用商標化したとしても、その使用は引用商標1ないし3の登録当時役務商標 の制度がなかった法の不備のため原告において商標管理を徹底できなかったことによる悪意 の使用であって、悪意をもって使用された結果慣用となっても慣用商標とも普通名称とも認め られない旨主張するが、「うどんすき」なる語が普通名称化した経過は前記認定のとおりであ り、これが悪意の使用の結果であると認めるに足りる証拠も存しないから、原告の上記主張は 理由がない。 三 以上のとおりであって、本件商標の「杵屋うどんすき」の構成中「うどんすき」の文字は、取 引者、需要者に「うどんを主材料とし魚介類、鶏肉、野菜類等の各種の具を合わせて食べる鍋 料理」の一般的名称として認識されているものであるから、本件商標の登録査定時には普通 名称化しており、その指定商品との関係においては自他商品の識別機能を有しないものという べきである。 したがって、本件商標の「構成中の『うどんすき』の文字は「『うどんを魚介類、鶏肉、野菜、そ の他の具と合わせて食べる鍋料理の一種』として一般に認識され、普通に使用されている」と した審決の認定判断に誤りはなく、この前提に基づいて本件商標中の「うどんすき」の文字の 自他商品の識別機能を否定し、本件商標と引用商標1ないし3とは、外観、称呼、観念におい て非類似の商標であるとした審決は正当であって、審決に原告主張の違法は存しない。 第三 よって、審決の違法を理由としてその取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを 棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条の各規定を適用 して、主文のとおり判決する。 裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司 日本ユニ著作権センター http://plaza4.mbn.or.jp./~jucccopyright/index.html 判例 第二
(上記の上告審)
《書 誌》
情報提供 第一法規出版
【文献番号】 28041630
【文献種別】 判決/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【判決年月日】 平成10年12月17日
【事件番号】 平成10年(行ツ)第94号
【事件名】 審決取消請求事件
【発明等名称】 杵屋うどんすき
【審級関係】 第一審 28031935
東京高等裁判所 平成9年(行ケ)第62号
平成 9年11月27日 判決
【第一法規出版提供判示事項】
1. 〈「うどんすき」の語は、鍋料理として一般に認識され、普通に使用されているとした
審決の判断に誤りはない〉とした原審の認定判断は、正当として是認することができる。
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 確定
【裁判官】 井嶋一友 小野幹雄 遠藤光男 藤井正雄 大出峻郎
【全文容量】 約8Kバイト(A4印刷:約5枚)
《全 文》
【文献番号】 28041630
審決取消請求上告事件
判 決
上告人 株式会社美々卯
右代表者代表取締役 薩摩和男
右訴訟代理人弁理士 西郷義美
被上告人 株式会社グルメ杵屋
右代表者代表取締役 椋本彦之
右当事者間の東京高等裁判所平成九年(行ケ)第六二号審決取消請求事件について、
同審判所が平成九年一一月二七日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。
よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
上告代理人西郷義美の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是
認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の
取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものに
すぎず、採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 井嶋一友
裁判官 小野幹雄
裁判官 遠藤光男
裁判官 藤井正雄
裁判官 大出峻郎
上告代理人西郷義美の上告理由
一、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背があるから、破棄を免れ
ないものである。
1.まず、第一に、
(一)、原判決には、『取引者、需要者に「うどんを主材料とし魚介類、鶏肉、野菜類等の各
種の具を合わせて食べる鍋料理」の一般的名称として認識されているものであるから、本
件商標の登録査定時には普通名称化しており、その指定商品との関係においては自他商
品の識別機能を有しないものというべきである。』と判示する(原判決第16頁第19行〜第
17頁第4行)。
(二)、しかしながら、
(1)、原判決は、取引者とともに、一般需要者を挙げてはいるが、重要な大多数の部分を
占める需要者を欠いている。つまり、この一般需要者には、指定商品であるこの種の料理
を製造し提供する者と、その料理を消費する者との、2つのグループに分かれる需要者が
存在するものである。そして、原判決は、きわめて多くの需要者部分を占めるこの後者の需
要者の認識がどのようであったものかの判断を充分には行っていないものである。
つまり、原判決は取引者に類する供給側の需要者の認識を検討しており、それらの供給]
側の需要者の認識はそれであり、もう一方のその料理を消費する最終消費者である需要者
の認識ではなく、それは最終の需要者が普通名称あるいは慣用商標だと認識しているとは
言えないものである。
(2)、そして、原判決には、いわゆる、普通名称化、慣用商標化した、あるいはそのような傾
向を持つに到った名称は何故に登録商標であっても権利主張ができないものかの法的根拠
の明示がない。しかし、思うに、商標中の普通名称化したとされる構成部分(本件では「うどん
すき」の語句)は商標法第26条第2項、第3項により商標権の効力が制限され、そのために、
商標法第4条第1項第11号の先願先登録商標として機能せず、後願商標の登録を排除でき
ない、との法律構成によるものと思われる。
しかし、前述したように、原判決は需要者の大多数を占める最終消費者たる需要者の認識
の判断に欠けるので、前記商標法第26条第2項、第3項の解釈適用を誤ったといえ、そのた
め需要者の利益を保護することができず、結局、商標法第1条の目的を達成できず、商標法
第1条にも違背するものである。
2.第2に、
(一)、原判決は、『また、原告は、仮に、「うどんすき」の語がサービスの分野において使用さ
れた結果、普通名称化しあるいは慣用商標化したとしても、その使用は引用商標1ないし3
の登録当時役務商標の制度がなかった法の不備のため原告において商標管理を徹底でき
なかったことによる悪意の使用であって、悪意をもって使用された結果慣用となっても慣用商
標とも普通名称とも認められない旨主張するが、「うどんすき」なる語が普通名称化した経過
は前記認定のとおりであり、これが悪意の使用の結果であると認めるに足りる証拠も存しない
から、原告の上記主張は理由がない。』と判示する(原判決第16ページ第8行〜第17行)。
(二)、ここに判示されたように、当時役務商標の制度がなく、この法の不備のため原告の商
標管理が不徹底となった事は確かであり、そのことが原告側に不利益な問題を惹起すること
となったのである。
(三)、そして、原判決は、「悪意の使用の結果であると認めるに足りる証拠も存しない」と判示
するが、商標法第39条で準用する特許法第103条は、非権利者による商標の使用について
は、過失を推定している。つまり、悪意が推定されるものであるといえる。そしてなお、類似の
商品についての登録商標の使用は商標法第37条第1項第1号に規定するいわゆる禁止権を
侵害するものであるが、指定商品の類を越えての侵害判断は微妙であり、積極的な差止め
請求などは困難な問題をはらんでいるので、原告の権利行使は実際上は不可能であった。
(四)、そして、このような悪意の一方的な使用の結果にによるものであるにも拘らず、普通名
称化、慣用商標化したとし、画一的に権利を消滅させ剥奪されることは到底容認できないもの
である。法の理念である公平の原理に反するものといいうる。
(1)、これはつまるところ、商標法第26条第2項、第3項の普通名称化、慣用商標化の解釈
適用に誤りがあったからといえ、以下のように解釈適用することで誤りを回避できたと考える。
まず、その骨子を述べると権利者が商標管理の徹底などの普通名称化の防止策を法律上
為し得たのかという局面と、他方権利者以外の使用者はその商標の使用ないし認識にいたる
状態が法上容認しうる状態で生じていたものかの両局面を比較考量して、両者に与えられる
利益不利益の配分を決定すべきものである。
(2)、それには具体的に以下のような比較考量、利益考量がなされるべきである。
(a)まず、権利者側の利益とはどのような点にあるかというと、商標について顕著性のある名称
とそうでない名称とは画一的に分類されるべきものではなく、その両極端の間にはそのどちら
ともいえないグレーンゾーンとでもいいうる時期、言い換えればその顕著性の度合いに軽重の
差がある時期が存在するはずである。つまり言うならば、準普通名称、あるいは、準顕著性を
有する商標とも言うべき状態にある時期である。この軽重による顕著性の有無の振り分けを前
述した権利者のその法的責任を勘案して決定する事で木目の細かな、公平な責めを負わせ
うるのである。
(b)つぎに、非権利者は、普通名称化した名称を使用する自由を獲得する場面であるが、この
自由も画一的な内容で認められるものではなく、その法的責任の遵守努力の多寡によって決定
されるべきものと考える。つまり、悪意使用の場合にはその使用の自由は大きく制限される
べきものと考える。
(c)このように権利者と非権利者との利益考量を法的責任を勘案して行う事こそ公平というべき
ものである。
(3)、また特に付記すれば、商標が普通名称化の傾向を持つか持たぬ状態のときに、関係当局
が、普通名称化したとの決定をいち早く為すことは慎重にして頂きたい。普通名称化を促進させ
決定的なものにしてしまうからであり、それこそ取り返しが極めて困難となるからである。
二、以上のとおり、原判決には商標法第26条第2項、第3項を誤って解釈適用しており、判決に
影響を及ぼすこと明かなる法令の違背が有り、そして商標法第1条に違背するものである。さら
には私有財産性を保障した憲法第29条に違背しており、原判決は破棄されるべきものである。
以上
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